「ボロミアさんってひまわりみたいだよね」 「ひまわり?」 「うん。だって笑うとおひさまみたいだし、まっすぐ立ってるし、おっきいし…だからひまわり!」 「へえ〜ピピンにはそう見えるのか」 「メリーは違うのかい?」 「そうだなぁ…僕は大きな木だと思うな。暑すぎる日差しや冷たい雨を遮ってくれる。てっぺんまで登ってもびくともしない大きな木。 それで秋には沢山の実をつけて、僕達に分けてくれるんだ」 「おやおや、面白そうな話をしているね。ねえギムリ」 「…面白いのか?」 「ねえねえ、レゴラスやギムリはどう思う?」 「そうだね…ボロミアは白の塔の大将なんだろう?だったら絶対に白い花だね」 「白い花かぁ」 「それもいいねぇ」 「そう、そして彼は人に愛されるすばらしい資質を持っているし、誰かさんと違って貴族らしい品もある。何と言っても公子様だからね。 まるで大輪の白薔薇のようじゃないか。でもわたし個人の意見としてなら白牡丹をおすすめしたいな。高貴で美しい彼には百花の王こそ相応しいと思わないかい? …ああ、でも白百合も捨てがたいかな。あの凛とした立ち姿と、優しい美しさがいいんだよね」 「…サム。ボロミアは美しいって言葉が似合う人だったかな?」 「熟したトマトだって美しいですだよ、フロド様」 「そうか…そうだね。収穫前の小麦畑だって金色に光ってきれいだよね」 「おやおや、小さき人達にとって、ボロミアは収穫物なのかい?まあ確かに美味しそうではあるけどねぇ」 「その辺にしておいたらどうだね、レゴラス」 「ああギムリ、君は何だと思うんだい?」 「わたしは地上の花には余り詳しくないんだが…あれなんかどうかね」 「たんぽぽ?ああ、それを選ぶなんて本当に君は何て目が高いんだろう」 「…サム。たんぽぽと白牡丹って似ていたかな?」 「どっちも沢山の花弁がある、丸い花ですだよ、フロド様」 「そうか…そうだね。ボロミアは沢山着込んでいるし、丸い盾を持っているよね」 「ねえねえ馳夫さん、馳夫さんは何だと思う?」 「私か?そうだな…やはりアセラスだろうな」 「どうして?」 「何で何で?」 「派手さはないが、控えめで素朴な白い花をつける。他の草花や薬草とは違ってアセラスだけが持つ優れた効能があり、 爽やかな香気が気分を和ませてくれる。それにアセラスは……」 『顔がにやけてるよ、エステル 』 『大きなお世話だ 』 『アセア・アラニオンは特別なもの。王の手の中でだけその真実の姿を見せるもの…君は「アセラス」を独り占めするつもりなのかな 』 『アセラスは「王の葉」だろう 』 「そうだね。それにアセラスは…貴重だけれども雑草だから、皆の手の届く所に生えてたりもするんだよね。庶民的って言えばいいのかな?」 「え?じゃあボロミアさんて雑草?」 「馳夫さん、それはあんまりなんじゃない?」 「…何じゃ、またおまえさん達か」 「ひどいなぁガンダルフ。そんなにイヤそうな顔をしないでよ」 「そうだよ、それに僕達はガンダルフじゃなくてボロミアさんに話があるんだから」 「ほう?」 「わたくしに何のお話ですかな」 「うん。あのねボロミアさん」 「「ボロミアさんの好きな花ってなぁに?」」 「好きな花ですか?わたくしは無骨者ゆえ草花には詳しくないのですが…そうですね、花よりもむしろ草原に惹かれます。 戦場には緑がありません。長く続く戦いは大地を荒野に変えてゆきます。 だからわたくしは草原が好きなのです。誰にも踏み荒らされていない緑なす大地。豊かで平和な草原が、我が祖国に広がればいいと… 我が民の心を癒してくれればいいと…そう思うのです。 これでは答えになりませんかな」 「いやいや、何ともボロミアらしい答えじゃのう」 「そうでしょうか?」 「そうじゃとも。いかにも…じゃな。 さあさあ、おまえさん達、お喋りはそのくらいにしておけ。そろそろ出発するぞ」 「「はーい!」」 「…結局、馳夫さんが一番近かったね」 「そうだね、ボロミアさん雑草が好きだって言ってたもんね」 ◇ end ◇ 本日の勝者・馳夫さん(笑) 賞品は夕食の大盛り。 お昼時とかには毎回こんな会話が交わされてるんでしょうね。 きっとこの後も 「でもさー、雑草っていったら馳夫さんの方が雑草っぽいよね」 「そうだよねぇ」 とか言ってるんだろうな。 個人的にアセラスにはミントのイメージがあります。上から水を撒いただけで爽やかな香気がほのかに立ち昇りますv 白くて小さくていい香りの花も可愛いのです。 |