大好きな…後編













僕は、あなたの為に何が出来ただろう

















旅に出てからもボロミアは優しかった。
ガンダルフだったら、この馬鹿者が!と言って杖で殴るんじゃないかというイタズラにも、ホビットの話し出したら止まらないお喋りにも、彼だけは何時でも笑ってくれた。
頭をクシャクシャと撫でてくれ、抱きしめてくれた。
大好きだと言うとすぐに、わたくしもですよ。と返してくれた。
僕達は本当に、本当にボロミアが大好きだった。

戦いの時は何時も一番前に出て、当然の様に皆を庇ってくれる。そんな彼を手助けしたくて、少しでも役に立ちたくて、剣を教えてもらった。
一度、疲れているのにごめんね。と言ったら、そんな事はわたくしが疲れを感じる程の強さになってから言うものです、と微笑まれた。
そのいじわるな優しさにピピンがむくれると、また頭を撫でられてた。
むきになって、絶対ボロミアより強くなってやる。と言うピピンに、それは楽しみだ。と笑ってくれた。
ピピンの無謀な意見は皆の笑顔を呼んでいたが、それが本当に本気だったって事は僕だけが知っていた。
僕達は本気で大切な旅の仲間達を、大好きなボロミアを護りたかったんだ。




大好きなボロミアを、僕達の、この 手で…
護りたかったんだ。




なのにボロミアは笑ってくれる。
辛くて、苦しくて、疲れているのに僕達に笑ってくれるんだ。
こんなに護りたいと思っているのに、彼がその苦しみをぶつけられるのは僕達じゃなくて…
僕達はこんな時でも、ただ護られているだけで…


ああ、指輪の力に捕われるのはこんな時なのかも知れないな、と思った。





そしてまた護られていた。
オークの大群に追いかけられ、もうダメかも知れないと思った時に助けてもらって、僕達はまた足手まといだなと思ったけれど、それでも彼が来てくれた事が嬉しくて…嬉しくて、ただ彼を見つめていた。

どうして僕達は逃げなかったんだろう。
どうして僕達は助けを呼びに行かなかったんだろう。



誰よりも護りたい人だったのに。



駆け寄りたいのに届かない。
抱きしめたいのに離されて行く。
彼が膝をついて、腕をおとして、それでも倒れまいと、顔を上げようと…

やめて。
やめてください。
もう戦わなくていいから、護ってくれなくていいから。
だから…
だから死なないで。

助けて、誰かボロミアを助けて。レゴラス、ギムリ、アラゴルン!
ガンダルフ!彼を連れて行かないで!!

伸ばした腕が届かない。
咽喉が涸れる程叫んだ声も届かない。
離されて行く。
遠く、遠く…その背中が遠くなって行く。
この指先から彼の背中までの、その絶望的な距離だけが僕の全てで………



きっと大丈夫だと自分に言い聞かせる事さえ出来なかった。










































大好きな、大好きなボロミア…
































僕は、あなたの為に何が出来ただろう






























辛く、苦しく、夢のように幸せだった この旅の中で























◇ end ◇



愛されてるボロミアが書きたかったようです
ピピンにしようかとも思ったんですが、あえてメリーで…



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