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他種族を殺す事は生きる為に必要な欲望だ。特に人間がいい。その身体の脆弱さも、それに見合わない戦いの手応えも、奴らの甘い血肉も存分に欲求を満たしてくれる。 道端の草を踏み潰すように、人間を踏み潰すのはこの上ない楽しみだ。 悲鳴、血の紅、断末魔の苦悶。絶叫。 快楽を呼び起こす憎悪を踏み躙りながら歩く。 人間を踏み潰すのはこの上ない楽しみだ。 だが今度の獲物は毛色が違った。 チビ共はどうでもいい。どうせ俺達のエサにはならねぇ。 俺達の真っ只中に飛び込んできたこのバカな人間。 忌々しい日の光を弾く髪の色をしていやがる。 ノロマな手下共を確実に仕留めていきやがる。 不利を知っていながら、負けるつもりの無い目をしていやがる。 は、はは、ハハハハハッ 殺してぇ 道端の草を踏み潰すよりも、咲いている花を毟り取って握り潰した方が楽しい。 こいつは花だ、草なんかじゃねぇ。 しかも忌々しい日の匂いがしやがる。 日の光の花だ。 ……殺してぇ！ 欲望のままに矢を放てば、急所を外して受けやがった。 しかもそのままで手下共を仕留めている。 それでいい、存分に楽しめそうだ。 二本目を放つ。 膝を折ったが、それでもまだ手下共を仕留めている。 最高だ。 最高の獲物だ。 何処まで持つ？ 何時まで生きている？ 三本目を放つ。 完全に膝を着いた。 だが倒れねぇ。 チビ共を連れ去ってももう動けない。 だが倒れねぇ。 ゾクゾクする。 四本目をつがえる。 間近によって見下ろすと、ゆっくりと顔を上げた。 その 目の 色。 ハハハハハッ 最高だ！ 次は何処に打ち込んでやろう。 何処まで持つ？ 何時まで生きている？ その血肉はどれだけ甘い？ 歓喜に近い憎しみがどこまでも湧き上がる。 この快楽は この最高の獲物が冷たい塊となる瞬間まで 続く。 ◇ 終 ◇ ラーツはサルマン様一筋なので… こんな事書いてますが、彼の幸福はこの瞬間で最後なんですよね。 さよなら ラーツ。 |