M i s s i n g Y o u
琢:「今、どの世代の連中に関しても俺が感じることなんだけど、この達観ぶりは何なんだ?って感じていて。
この歌の核になっているのは、ある意味諦めた、本当に老いた犬のようで…なんで分かりきってるんだろう、
若いのになんでそこまで悟りきってるんだろうっていうことなんです」
『Missing You』の発売時のインタビュー。
2000年11月、ワッツインです(私はこの表紙を本屋で見て吹き出しました)。
『Missing You』。
タイアップもなく、数週間後にはベストアルバム発売という、ある意味宿命を背負ってるような曲(…)。
いやぁ、渋谷まで行ったんですよ、タワレコに買いに。
で、あの交差点あたりにポケーッと突っ立ってたんですよ。
ツタヤで店頭販売やってて、ひっきりなしに『Missing You』がかかってたんですよ。
その日の日記を引っ張ってきました。
雨の渋谷の交差点をボーっと見つめながら、流れてくるこの曲は…。
歩いている人は、みんな酷く疲れた顔に見えて。
何をそんなに急いでるのか、誰もが急ぎ足。
欲望がひしめいている場所、それと同時にどこか冷めてる場所に思える街。
そんな中で、宣伝として流れるGLAYの曲。
ああ、こんな時代もあったなと、今振り返ると感慨深くございます。
そして冷たい雨だったような記憶がある。数日後はHGさいたま&代々木公演を控えてた頃でした。
『Winter,again』と『Missing You』。
どちらも凍てつくような寒さを湛えている厳冬の歌です。
『Winter,again』は、GLAYのシングルで最も売れた曲(だったような)。
けれど、GLAYファンの間では、圧倒的に『Missing You』を推す人が多いのが事実です。
何でだろうと、無いアタマ振り絞って考えてみた。
タイアップもなし、出したタイミングあまり良いとはいえない、でも隠れた名曲。
HGツアー後半戦で成長していく様がありありと伝わってきた曲。
ラップが入ってるから。ストリングスが入ってるから。どこか懐かしいギターが入ってるから。
PVが最高。
…PVだろうか(´¬`)。
いや、もっともっと他の理由もあるんだろうけれど。
私にとっては、全部がいいのです。そう、この曲を構成するパーツ全てが。
低く響く、重厚なストリングス、うねってうねってうねりまくるベース。
ジャーンジャーンみたいな(意味不明)、重苦しく引っ掻くようなツインギター。
これでもかこれでもかという程に重ねられてく、さまざまな音。
「俺の十八番だ!」と張り切って歌ったらしい、情熱的なヴォーカル。
「俺のファルセットは汚いですよ」と言いながらも、切なく掠れたファルセットが味を出してるBメロ。
そのファルセットを「秀逸だ!スキルアップだ!」と喜ぶリーダー(笑)。
最後の歌と吐息2:8の英語詞。
はぁはぁ…一気に書いてみました(;´Д`)。
なんつーんだ。
『Winter,again』は、滔々と降る雪。
『Missing You』は、つらつらと落ちる雪。
でも吹きすさぶ風。そして吹雪。
今気付いたんだけど、この曲のメインは冬前っぽいだね。
って、1行目読めば分かるか。ガーン。
HGツアーの時期が、まさに合ってたのか。
作ったのは、真夏。
確かお盆の頃だったかな。友達連中はみんな墓参りだなんだと日記に書いてました。
そのときに、「冬の歌が聴きたくなったんだけど、ないから自分で作ることにした」と。タクロウさんらしい。
B'zの今や伝説となった千葉マリンスタジアムでの雷鳴ライブの翌日だったような。観に行ったんだよね。
そして、翌月から始まったHG後半戦の初日から最終日まで、ずっと歌われ続けてきました。
さいたまアリーナ、代々木では、ミラーボールが素敵だったなー(´ー`)。
8:前橋の歌
はぁぁぁぁ…♪ジロ君のツッコミも(ヘビゲじゃ初めてじゃない?)、リーダーの声も聴けて幸せっス★
そんなこんなで始まった新曲。
リーダーのみ照明があてられて、イントロが流れ出します。
またコレが切ない曲(涙)。
薄暗い照明で、赤黒いイメージ。
Winter,againが、真っ白な銀世界で、世の無常を雪にたとえて歌っているなら、
新曲は、冬の重苦しい灰色の空を見上げて歌っている雰囲気ですね。
詞も暗め。「正直者がバカを見る〜♪」って、カナリの衝撃(^^;)。
あとは、「あなたと初めて見た雪を〜♪」とか「魂の〜♪」とか、ドラマチックな曲調に乗せて畳みかけてきます。
尚兄のギターの歪んだ音が、また世界観を広げているみたいだよ。
ラストは、たくろーさん&てるさんだけが浮かび上がって、静かに歌います。
サビを英語で歌ってた。枯れた冬の景色が見えるようだったよ。
サビのメロディーが、頭から離れないっす。悲しい響きだった。
↑はHG後半戦初日、前橋公演のレポから抜粋しました。
そうか、最初は「前橋の歌」だったのか、BOOWYの氷室さんの故郷でしたっけ。
そんなようなことをMCで話してたハズ。
しかも「魂の〜♪」なんて歌詞は何処にもないのに(恥)。
「たまっしいはぁ〜♪(ジロウ風)」はビリビリだっつーの。
しかもしかも、サビは日本語だっつうに(ほんのり恥)。
しかもしかもしかも、ラスト浮かび上がるのは、てっこさんとたっくんの後ろにいたシゲさんだったりして(猛烈に恥)。
だけど、当時はウットリと見入っていましたよ。かっこよかった(´∀`)。
PVがとにかくもう大好き。
公開された当時、"Wてっこ"で話題がもちきりでしたねぇ。
今までのPVではありえなかったぐらいの、ものすごい表情で歌うてっこさんが新鮮で新鮮で。
荒野に向かい合って佇む2人のてっこさん。
睨み付ける表情の色気がなんとも凄くて、ゾクゾクしてまうのはオイラだけでしょうか(*´Д`)。
個人的には「どうして2人惹かれたのだろう」のとこのてっこさんの表情が大好物です(ポ)。
対照に同一人物を置いたPVの設定。
なんとも、歌の世界観に合ってるなーと、つくづく思います。
1人の人間が持つ二面性。
極端なほどの表向きと裏向きがあって、初めて人間性というものは成立するのかもしれない。
そう、この『Missing You』で歌われている人間達は特に。琢:「逃れられない"業"の部分を書き出した、最初の作品かもしれない。今まではわりと、『自分と誰か』とか、
『身近な誰か』だったんだけど、ひとつ人間ってものを通して誰もが持つ"業"って部分に着眼したというか。
こっちは完全に人の闇の部分を歌詞に書きたいなって」
仏教ですな…(´ー`)。
"業"なぁ………。
タクロウさんはきっと辞書を引きながら歌詞を書いていると思われるので、広辞苑を開いてみました。
業⇒行為・行動・心や言語の動きも含める。
"業"っていうと、そのまんまタクロウさんが言う通り「人の逃れられない闇の部分」って感じですが。
それだけじゃなくって、良い行為も"業"に含まれたりするわけで。積み重なっていくもんで。
んで、悪いことをすれば、いつかかならず同じだけの報いが自分に来る、と。
もちろん、良いことをすれば、いつかかならず良いことが自分に来るってもんで。
これが因果応報ってヤツですが、私はこれを信じる派です。希望は信じませんですが(´∀`)。
つか、持論に「人間みな平等の法則」ってのがあってね…趣旨違いなので、また後日。
しかし、"業"っていうと、分かりづらいし、暗いしで(;´Д`)。
冬の歌にピッタリくる、「人の心の闇」。それがテーマだそうです。冬を待たずに I miss you, oh no 心変わりを呼び起こす
そして密やかな胸 伝え切れず 孤独を贖う
心変わり。
最初は、自分の胸の内だけに留めておく秘密。
伝えきれなくて、伝えられなくて、距離が離れてゆく。
そして、もたらされる罪悪感を孕んだ孤独で、報いとなった孤独を贖う。
いっくら真摯に永遠を誓い合っても、その後に訪れる心変わりにはどうしたって逆らえないな。
部屋に残る温もり、思い出が 旅立つ気持ち鈍らせる
二人の間にだけ通う言葉も もう使うこともない
変わってゆくものを繋ぎとめられるもの。
2人の想い出とか、存在の名残とか。
別れを決めても、最後の最後までその決心を鈍らせるもの。
2人の間にだけ通う言葉。
ゾクッとします。そこはかとないエロチシズムを感じるような。
国道を走る車 黙り込んで 別れを知りながら
どうして二人惹かれたのだろう?
インタビュアーの人に、「国道っていうトコロが北海道だね」と言われてました。
「首都高速じゃないっていうね(笑)」ってタクロウさんは返してましたけれども。
「首都高」…。
首都高なんて出てきても、東京に住んでる人にしか分からないと思う。
私も分からん。あんなのガソリン使うだけタチの悪い迷路だ(苦)。
「国道」っていうと、日本の隅々まで想像出来るっていうか、みんなが分かる。
そゆとこが、万人に伝わりやすい詞の世界を創ってるんだろうね。
別れを知りながら…か。
最初に記したタクロウさんの言葉が、ここらへんに当てはまるのかな。
それとも、これが「人の心の闇の部分」なのかな。
別れを知りながら、惹かれること。
お互い傷付くことを知っていながらも、近づいてゆくこと。
ううむ。
あんまし分からんのですよ。
あんまし共感までは行かんのですよ。
バイバイしなきゃならなくなる人だったら、スッパリ諦める性分ゆえ。
むしろ、何が何でも好きで好きで好きなんだよゴラー!っていうのは苦手でござい。
ゆっくりと、穏やかに過ごしていきたいのが願いです、波風キライ(;´Д`)。
傷付けたくない。
…は!
これが「諦め」なのかすら?
「汗をかいてナンボ」なのかすら!?
私は何かを失くしてしまったのか?
世間はいつも したたかだから 正直者が馬鹿を見る
気のあるふりの女 嘘つきな男
怖がりな老いた犬のようだ
初めて歌詞を読んだとき、まるで私に対して書かれてるような気がした個所です。
いやぁ、長年冥い淵を覗き込み続けてるタクロウさんですね。誉めてるんだって。
タクロウさんが三人称を使う詞は、どれも冷静で、的確な描写をしてると思う。
的確なだけ、冷たい。冷たいってんじゃないなー、冷ややか?同じだな(己の語彙の無さに辟易とす)。
老いた犬。
獰猛な野良犬も、老いたら吠えなくなる。
何かを悟ったように、ただ遠い空を見ているよう。
「夢をあきらめるな」と歌い続けてきたGLAY。
いきなし、「正直者が馬鹿を見る」と歌われて、結構ビックリしたかも。
GLAYさんも、いや、タクロウさんもあきらめたのかと思ったものです。
けど、数ヶ月後には「GLOBAL COMMUNICATION」という今まで以上の夢を掲げたのでしたが。
振り返れば僕ら 形のない 愛という文字を
これほどまでに 求めようとするけれど...
形のない愛。
こころとこころで繋がる愛情。
たっくんが冷ややかなので、私も冷ややかに。
愛を形で求めようとするから、ひとのこころは惑うんだよ。
形のある愛なんてない。型にはめようとするから苦しむんだよ。
形のある愛じゃなくて、形のない愛を求めてきたんでしょか。
孤独だから、求める。餓えたこころに一瞬の安らぎを得ようとして。
そして、底無し沼のような大きな水溜りが濁り、澱む。
ひとつひとつ、積み重なってゆく。罪重なる。言い得て妙。
春の恋しさよ 花の息吹よ 冬の長さが募らせて
あなたを失くした初めての雪は つらつらと慕情に落ちる
冬の長さが募らせて。
「Winter,again」と同じく、彼らだからこそ歌える歌かと。
永い永い冬を越えて、やっと訪れる春。
春の陽光の下で咲く花をどんなにか待ち望んで。
あなたを失くした初めての雪…。
メロディーの盛り上がりとの相乗効果で、たまらなく切ないでっす。
つらつらと。
連なるように、止めど無く降ってくる冷たい雪は、焦がれるこころすら冷たくさせるのでしょうか。
僕らが過ごした青春の日々を何で計れるの?
吹雪にも似た激動の平成 瞳閉じないで見つめていて
この歌詞は、まさに私達リスナーへのタクロウさんの問い掛けかと。
モロに最初の「オマエラの達観ぶりは一体なんなんだよ」ってのと同じだよね。
何もしないウチから何で諦めてるんだ。
何故そこまで冷めてるんだ。実際に動かないと何も始まらないだろう。
凍てつく吹雪のような今の時代だけど、決して目を反らすなよ。
目をつぶったまま、見なかったフリするなよ。
見ないフリするなよ。
そんなタクロウさんの痛烈な問い掛けが聞こえてくるようです。
どこまでも白い雪のような あなたに降る夢の礫
声を届けてよ いつものように それだけで距離さえ超える
夢の礫。
つぶてとは、小石のことで。
投げつけられた石みたいなニュアンスを持ちます。
どこまでも白い、雪のようなあなた。
雪のように、触れれば脆くも崩れそうなあなた。
汚れを知らぬ、純白の雪のようなこころを持つあなた。
あなたに降る、夢の礫。
なんか痛そうな感じ。夢が礫のように降ってくる。
声さえ聴くことができるなら、それだけで距離は埋められる。
いつものように、何度も繰り返してきたように、どんなに離れれても。
今はまだ 声も細く 永久を乞う悲しみに閉ざされている
今はまだ 容赦なく 吹きすさぶ風に歌う歌もかき消されて...
永久を乞う悲しみ。
同時期に作られた「ひとひらの自由」にも、似た表現が使われてる。
容赦なく、吹き荒れる風。
風の音にかき消される、細い声で歌う歌。
永遠を乞いながら、歌うのか。
声のが続くまで、伸ばすヴォーカル。
最後は枯れてしまったように、重苦しい空気に溶けてなくなる声。
そして改めて静かにストリングスが響き、英語詞で囁くように歌い始めます。
サビまでの激情をはらんだクライマックスとは打って変わって、その果ての静寂に辿り着いたような。
なにもかものエピローグのような、悲しみに満ちた声がたまらんです。
しんしんと降り続ける雪の中。
私には、言うべき言葉はもうない。
風が吹きすさぶ冷たい道に、ただ立ち尽くしている。
私を独りにしないで。
私から去っていかないで。
ここでもう一度、愛が息を吹き返すのを、待っている。20021125