テストプレー -6



「聞仲!カウント始まったぞ!聞仲!!やり直しになってもいいのか!?

絶対に!嫌だ!!

すごい勢いでガバッと起き上がった聞仲は、思いっきり立眩みをおこしてベットにへたり込んだ。

「これでも飲んで、気分を落ち着けろよ」

と言って飛虎から手渡されたベットサイドに置かれた飲み物を一気に飲み干してしまったのは、その場の成り行きだった。……が。

その途端。



ピロリーン♪
聞仲は秘密の薬を使った

聞仲の感度が50上がった


聞こえる悪魔のナレーション。

しくしくしくしく………

…とうとう泣き出してしまった。

「な、泣くなよ…ほ、ほら、これで満足度上げやすくなったと思えば…な?」

神経を逆撫でしまくる慰めを受けて、聞仲は泣きながらパンチを繰り出した。

ぺちぺちぺちぺちぺち…

「聞仲…」

ぺちぺちぺちぺちぺちぺち…

力ないパンチが哀しい。

「聞仲……その…頑張ろうな」

しくしくしくしくしく………

ショックの余り泣き続ける聞仲を、飛虎は可愛いと思った。
目の前の聞仲は外見だけなら絶世の…と形容詞が付きそうなほどの美人(少年だか少女だかよくわからないにしても)だし、飛虎は思いっきり面食いだった。
要するに今の聞仲の姿はビックリするほど飛虎の好みなのだ。
思い切ってそっと抱きしめるともう抵抗しなかった。
多分、諦めたのだろう。
大人しくなった聞仲の耳元で名を呼ぶと、微かに身体が震えるのを感じる。落ち着かせようと髪を撫でていると、だんだん愛情を感じるようになってきた。
そっと口付けて横たえる。
灯りが消され、ゆっくりと衣服が脱がされていくと、闇の中に滑らかな肌が浮かび上がる。

「………聞仲」

囁きをその肌に埋め、滑らかなラインを唇で辿ると、微かな喘ぎが聞仲の唇から漏れる。
その甘い響きに眩みそうになりながらも、飛虎は心の何処かで自分がいつもと違う事に気付いていた。
目の前に居るのは確かに聞仲なのだと分かっているのに、真剣に愛情を感じる。
本体は同年代の男だと、自分の親友だと知っているのに、恋人としてしか捉えられない自分が居る。
それがこの世界のせいだと理解していながら、聞仲に溺れていく自分をどうしても止める事が出来なかった。
触れるたびに反応するしなやかな肢体。肌に刻まれていく所有の証。甘い喘ぎを繰り返す唇。ゆっくりと反り返っていく咽喉。切なげに震える睫。
その全てに欲情を煽られて、貪るように聞仲を抱く。

「……あ……っ」

ゆっくりと下肢に向かって行く舌を感じて、聞仲は身体を震わせた。
薬を飲まされてから徐々に正気が失われているのだと理解は出来ても、それを止める術はない。
苦痛の存在しないこの世界は、触れられる度に溶かされそうな厚さと快楽だけを与え続ける。
耐え切れず声を上げれば、すぐに優しい口付けが与えられる。
徐々に思考を失いながら、聞仲は快楽に身をまかせていった。

優しくしようと思いながらも、無理矢理押さえつけて思う存分抱きたいと思ってしまう。
悦ばせてやりたいのに、なかせてやりたいという気持ちが抑えきれない。
相反する思いを持て余しながらも、飛虎は最新の注意を払って聞仲に触れる。
しなやかな脚をゆっくりを開かせながら敏感な場所に軽く口付けると、その背が瞬間的に反らされる。そっと舌を這わせた途端、甘く切ない声が名を呼んだ。

「飛……虎…っ」

この状態で初めて名を呼ばれ、飛虎はクラリとした眩暈に襲われた。
失いそうになる理性を必死で保ちながらも、それ以上の我慢は続けられず、ゆっくりと聞仲に身を沈めていった。

「…………っ」

直後に襲ってきたきつすぎる快楽に身悶え、気を失いそうになりながら、聞仲は飛虎にしがみついた。背に詰めを立て、方に歯を立ててその快楽に耐える。飛虎の肩から流れ出た血が聞仲の唇を伝って震える咽喉に流れ落ちる。
飛虎はその血の紅さに酔い、聞仲はその甘さに酔う。
二人は互いの存在に、互いの身体に溺れて高みへと上り詰め、絡み合いながら堕ちて行った。



そして3時間が経過した後には、ようやく正気を取り戻した飛虎と、何故か『満足度』が350を超えていた聞仲の気まずい沈黙があった。
しかし、そんな二人の心など綺麗に無視して、何事も無かったかのようにハッピーエンディングが始まる。




こうして無事、プリンセスと結婚した勇者は
国民全員の祝福を受けてこの国の王となり
二人でつくりあげた豊かで平和なこの国は末永く続いて行きました。

The Happy End


何だか苦労したにしては、かなり投げ遣りなエンディングの後、二人はようやくこの世界から開放された。




壁もソファーもテーブルもあの胡散臭い例の機械も、全て元のままである。
時計を見ると、まだ二時間程しか経っていない。直に頭にデータを流し込む為、実際に掛かった時間はゲームの中よりも遙に短くて済むらしい。おそらく夢と同じような原理だろう。
しかし、この短い時間に二人の間では確実に何かが変わってしまった。

「…………………………………………………………………………………………
 …………………………………………………………………………………………」

呆然とした表情のまま凍り付いている聞仲に、飛虎はどう言葉を掛けていいか分からず、しばらく居心地悪そうにしていたが、やがて決心するとおそるおそる声を掛ける。

「……聞仲…」

「………………」

「聞仲…あの……その、な」

「………けいだ

「え?」

ぼそっと呟かれた言葉が聞き取れずに思わず聞き返すと、暗〜い声が返って来た。

「……150…よけいだ…」

「あ…」

そういえば、と飛虎は思った。
200あればクリアできる『満足度』が最後には350を超えていた気がする。……まずい。

「い、いやその…た、足りなくてクリアできなくても困るし…ほら、途中でのチェックは出来ないし………その…あんまし気にすんなよ、犬に噛まれたと思って…な?」

と、うろたえながら口走った途端。

ブチイィィィィィィッッッッ!!!

何かが切れる激しい音が確かに聞こえた。

「噛んだ犬は忘れても、噛まれた相手は絶対に

 忘れんのだ!!」


そりゃあそうだろう。
聞仲の言葉には、海より深い説得力があった。

「150も余分に噛むとは何事だ!!」

流石にそれを言われると後ろめたい。だが、しかし…と飛虎は思ってしまった。

「でもまあ、実害は無いんだし…」

その瞬間。

シュッ

野蛮な風が吹いた。

バシベキバキベキバシッベシッバキィッベキィッ…

聞仲の恨みを込めまくった攻撃が激しく炸裂した。

「聞仲!」

「飛虎は必死にガードしながら説得を試みるが、聞仲はこれっぽっちも聞いちゃあいない。

バシィッベシィッドカァッドバキャァッ…

「聞仲!!落ち着けよ!」

もちろん聞いていない。
仕方なく飛虎は禁断の一言を発した。

「だいたいこの話を持ってきたのはオメーじゃねぇか!

ピタッ

凍り付いたように聞仲の動きが止まった。

「………聞仲…」

「…………………………………………………………らいだ

「聞仲…」

「きらいだ、飛虎なんて」

聞仲は堪えきれずにとうとう涙ぐんでしまった。
それを見た飛虎は、ゲーム中の恋人だった聞仲を思い出し『可愛いな』などと思ってしまった。



この日を境に、二人の関係は微妙に変化し始め、例のゲームは取りあえず二人プレイが禁止された。


◇◇終◇◇



終わりました〜☆ ああ、これでようやく不幸聞仲から普通の聞仲さまに戻ってくれます。
でも何だかこの先も、不穏な空気が漂ってますね(笑) 頑張れ聞仲さま!

ちなみに序盤で出てきた、お礼の時計がもらえたかどうかはかなりナゾです。…もらえなかったかも(笑)

長くなってしまいましたが、最後まで読んでくれてありがとうございましたv




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