魔の熱帯雨林を通り抜け、字の灼熱砂漠を突破して、やって来たのは砂の嵐に隠された、天高くそびえる塔だった。 ここに来るまでの道程は長く、倒した敵の数も多かったが、それはあくまで飛虎の倒した敵の数である。 そう、我らが『メラ魔道士 聞仲』は役立たず三昧であった。 彼の辿ってきた辛い道程は涙なくしては語れず、本人も二度と思い出したくないであろう。 それでもようやく『最後の塔』に辿り着いたのである。 この塔さえクリアしてしまえば、この忌まわしい世界から無事脱出できる。その事実だけを心の支えにして、我らが『哀しみのメラ魔道士 聞仲』は『比類なき勇者 飛虎』と共に『最後の塔』に登っていった。 その塔の内部は別世界だった。 今までの身を焦がすような暑さはまるでなく、時が止まったかの様な静けさと氷の様に肌を刺す冷たさだけがあたりを包み込んでいた。 「……寒い…」 あまりの寒さに『孤独と哀しみのメラ魔道士 聞仲』は地震でも起せそうな程に震えていた。 「ん?ああ、そうだな」 平然と言ってのける飛虎は、さほど寒そうにも見えない。さすがは『勇者』様である。 「でも良かったじゃねえか、聞仲」 にかっ、と微笑む『勇者』様の人懐こい笑顔に思わず逆恨みを感じながら『悲劇の魔道士』はぶっきらぼうに答えた。 「何が良かったと言うのだ」 「何がって、寒い場所に出てくる敵は火に弱いって決まってんだろ。オメー魔力だけは強いんだから『メラ』だって効くんじゃねえのか?」 ──何と…何という素晴らしい言葉だろうか。私は、私はもう役立たずなどではない。私の力はこの塔の為にあったのだ。そうだ、私は魔道士だ。私は最強の魔道士なのだ!!── その時『役立たず地獄』から『最強の魔道士天国』に一気に上り詰めたその気持ちを、彼は生涯忘れられないだろう。 こうして初めて活躍の場を得、生まれ変わった『炎のメラ魔道士 聞仲』は、今までの恨みと哀しみを込めて敵を倒しまくった。 「我が前に立ち塞がりし愚か者共よ!命が惜しくば道を空けるがいい!メラメラメラメラメラァ!!」 一気に最上階まで突っ走るその姿は、生き生きと輝いていた。 人間、勢い付くと信じられないような力を発揮する。 不幸の反動でこれでもかと言うほど調子に乗りまくった聞仲は、飛虎と力を合わせてあっさりと『最後の敵』を倒してしまった。………メラしか使えないくせに。 「よし!これで私は名実共に『最強の魔道士』だということが証明されたのだ!」 こだわってしまうのが哀しい、と飛虎は思ったがあえて何も言わないことにした。 「さあ、全て終わった。元の世界に帰るぞ」 聞仲は上機嫌で飛虎を振り返った。 「ああ、そりゃいいけどよ…なあ、何か宝箱みたいのが落ちてるぜ。いいのか?ほっといて」 「宝箱?」 言われてみれば、やたらと綺麗な箱が落ちている。 「これか?確かに先程まではここに無かったな」 不思議に思って開けてみると、中からは美しい宝玉が出てきた。 聞仲は『真実のオーブ』を手に入れた 何処からともなくナレーションが入る。 「………聞仲。今の、何だ?」 「何か…重要アイテムとかではないのか?」 確かに今まで一度もナレーションなど入ったことは無かった。 ということは、そうとう重要なものなのだろう。と二人の意見は一致した。 「使ってみろよ、聞仲」 「そう…だな」 聞仲は『真実のオーブ』を使った そのナレーションが入った途端、聞仲は眩い光に包まれた。 聞仲の呪いが解けた ──……呪われてたのか、聞仲── どうもおかしいと思った。と悠長に考えながら、飛虎は呪いが解けて生まれ変わったであろう聞仲を見るために、眩さに逸らした目線を再び聞仲に向けた。 すると。 そこにはまさしく生まれ変わった聞仲が居た。 ◇◇続◇◇ も、もう少し進めようと思ってたのですが、タイムアウトです(汗) 今回の聞仲様は幸せそうに壊れてますね(笑)役立たずから昇格したのが嬉しくて仕方がないようです。 何だか飛虎の影が薄いですが、彼はその分だけゲーム中で活躍してるんですよ(笑) そして次回からちょこっと方向性が変わってくる…筈。 |