旗本退屈侍捕り物帳

人斬ノ唄

<七>

翌日、普段着を着た聞仲は佃島に行った。

現在でもそうだが、佃島及び隅田川下流一体は陸海の運搬の要所であり多くの運送に携る業者が店を構えていた。
大店や土蔵が建ち並び、体格の良い男達が威勢の良い掛け声を上げながら岸に東西から来た品物を上げており、町並みには活性に満ちている。
聞仲は男達が力強く押す大八車を端に寄って避けた。通り過ぎた大八車には灘や京都から来た酒が積み込まれていた。通り過ぎた後、ほんの僅かだが品の良い酒の香りが彼の鼻腔を擽った。

廻船問屋加茂屋番頭の平助について調べる事になったのは聞仲だった。幸い、聞仲は加茂屋ではないが別の廻船問屋には庭師として出入りした事が有るので先ずは其処に向かった。

荒っぽいが景気の好い風景をゆっくりとした足取りで通り抜けると聞仲は一際目立つ大店の前に立った。
金鰲屋は元々京都の商人が開いた廻船問屋だが今では江戸屈指の大店である。聞仲は店主には未だ会った事が無いがとにかく派手な内装の店で、庭もやたら珍しい花が咲いていたのを憶えていた。
以前、春にこの店の主人の庭に行った時は余りに色が多くて聞仲は目が痛くなってしまった。それ以来、聞仲はあまりこの店に好感を持てなかったがいきなり加茂屋に出向くツテも無いので塞ぐ気持を堪えて店に入った。

中に入ると以前庭を案内してくれた番頭と目が合った。聞仲は軽く頭を下げて番頭に近づく。

「お久しぶりでございます。太師屋の聞仲でございます」
「ああ、太師屋さん。久し振りだ」
「ちょいとこちらに来たので挨拶に参りました」
「おおそうかい。まま、上がってくれや」
「それでは」

移動手段といえば徒歩か駕籠ぐらいしかないこの時代、用が無くても目的地に知り会いやらがいれば立ち寄るのは良くある事で、特に聞仲の様な付き合いが大切な職人が客の元に顔を見せるのはごく当たり前だった。
番頭の方としても腕は良く見目麗しい聞仲がいる事は荒っぽい町に潤いを与えてくれる様なもので機嫌良く迎えた。

「最近の仕事は如何でございますか」
当たり障りの無い会話から聞仲は始めた。
「罰が当りそうなくらい儲かっているよ。旦那さんがやっと長崎から帰って来てくれたんで店もしっかりしてきたし、笑いが止まらなねぇよ」
「おや、旦那さんは長崎にいたので御座いましたか」
「ああ。蘭物好きが高じて二年前に店を俺に任せて出島へ行っちまったんだよ」
「舶来物が好きだとは言え長崎に行ってしまうとは…」
「太師屋さんもそう思うかい?最初は俺もそう思ったんだが帰ってきた時にはちゃんと商品も持って来てくれたし、商才はしっかりある方だぜ」

そこですかさず聞仲は平助の事を質問した。

「商才でございますか。そう言えば昨今の商人といえば加茂屋番頭の平助さんも中々の商才を持っていると覗いましたが…」
「平助?辻斬りで死んだあいつだろ?」
「はい」

番頭はひらひらと手を振って聞仲の仄聞を否定した。

「おめぇさんが何処でそんな話を聞いたのか知らねぇがそりゃ大きな間違いだ。加茂屋が十年で江戸屈指の大店になれたのは半年前に川に落ちて死んじまった先代の錦司のお陰だよ。流石は先々代に見込まれただけあってウチも錦司さんには梃子摺らされたが…って失礼」

番頭は話し半ばに言葉を止め、腰を上げて入り口を見る。そして
「ちょいとここで待ってな」
と、言って席を立ってしまったので残された聞仲は番頭席の隣に残るしかなかった。
番頭の「お帰りなさいませ」という声が聞仲の耳にも届いた。恐らく聞仲が未だ会った事の無い旦那が帰ってきたのだろう。従業員が一斉に挨拶する声が聞こえた。
人付き合いの不得意な聞仲ではあるが自分も挨拶しなくては行けないだろう。近づいてきたのを見計らって聞仲は振り向いて金鰲屋の旦那を見た。

聞仲の頬が引き攣る。
目の前にはとにかく(目が痛くなるほどの)きらびやかな男がいた。

現代風に表現するのならば金糸とレースでゴテゴテに装飾された深紅のビロードの洋風合羽と、その下にワインレッド色の絹に銀糸で薔薇の刺繍の入った着物を彼は着ていた。頭には真珠の粉がかけられていて、錦帯で髪が結われている。つまり大雑把に表現するとマ○ケンのような格好をしていると考えてくれればよい。
とにかくド派手、正月の役者でも着ないような派手で見た事も無い格好をしている。
それだけでも十分驚きに値したが聞仲が驚いたのは着物ではなく、彼の顔だった。
隈取りでも取ったかのような彫りが深く、髪は巻毛で服に負けず目立つ造作をしているその顔を聞仲は嫌でも知っていた。
男は聞仲を見ると役者のように大袈裟に喜んだ。

「おおっ、何て麗しい人なんだっ!吉原の太夫でもこうは美しくあるまい!」
「・・・・」
言葉を失っている聞仲の代りに隣で控えていた番頭が相槌を打つ。
「旦那様、いつも庭の手入れをしてもらっている太師屋聞仲さんでございます」
「君が聞仲君かぁ!いつも僕の庭を美しくしていて有り難う、君にはいつかお礼をしたかったのだよ」
「はぁ…」
「太師屋さん、こちらが金鰲屋の新しい旦那の趙公明様だ」

お前に言われなくても知っている、とも言えない。ちらりと上目遣いに趙公明を見るが彼は何も反応を示さなかったので聞仲は頭を下げた。

「…始めまして。太師屋聞仲と申します。いつも金鰲屋さんには贔屓にして下さっているのに旦那様にご挨拶が送れてしまい申し訳ございません」
「ノンノンノン、君が頭を下げる必要など無いよ。そうだ聞仲君、私の部屋でお茶でも飲まないかい?長崎から持ってきた西洋の珍しい茶があるんだ」
「いえ…」
「太師屋さんや、遠慮はいらねぇよ。西洋の茶なんざ滅多に飲めねぇんだからよ」
「しかし…」
「さあさ、奥に上がっちまいな。旦那様もどうぞ」

聞仲の抵抗も虚しく、半ば番頭に引きずられる形で奥に聞仲は連れられる。その後ろを悠々と歩く趙公明と目が合い、聞仲はありったけの怒りを込めて睨みつけた。視線だけで人が殺せるのならば趙公明は即死だっただろう。残念ながらどんなに人を睨んだところで殺傷能力は無いので趙公明は背中でその視線を受け止め、自室に向かった。




「何故貴様が此処にいるのだ」
聞仲は廊下に人の気配が無くなった途端、口を開いた。
趙公明の部屋に案内され、西洋の茶と長崎名物のカステラを出され、部屋には二人だけになっていた。
しかし子供が見たら泣き出しそうな鋭い視線で聞仲に睨まれている趙公明は平然としている。輸出用の派手な塗りの柿右衛門の西洋風湯飲み(カップ)を手にして満足げに目を閉じた。
「うーん、良い香りだ。特に今日のダージリンは素晴らしい。やはり美しい君が目の前にいるからかなぁ」
「趙公明、私の問いに答えろ」
取りつくシマも無い無愛想な態度を取る聞仲。腕を組み目は据わり、体から怒気を発している。これ以上同じ態度を取れば殺気に変化するのは明らかだったので公明は紅茶を畳の上に置いた。

「まったく君はせっかちだな…。ま、それも君の可愛い所なのだけど。で、何故此処にいるかだって?それは僕が店の主人だからさ」
「京で朝廷に仕えていたのではなかったのか」
「君が義姉と一緒にむさ苦しい江戸に行ってしまったと聞いた時にはとても驚いたけれど、例え雅やかな京も君がいなければ焼け野原と同じだと気付いてねぇ…」
「それで金鰲屋を乗っ取ったのか」
「人聞きの悪い。僕はちゃんと先代の元で仕事を覚えて養子になったのだよ」
そう言って公明は金箔の扇を開いて呵呵と笑った。
柄には螺鈿細工が施された扇を見て聞仲はうんざりした。
同じ忍びの里の出身である趙公明の派手好きは以前から知っていた。しかし腐れ縁の彼とやっと縁を切ってから数年の間に、更に彼の趣味は派手になり常識を逸している。
庭といい、床の間に飾っている壷や錦絵、ふす間や襖障子に至るまで洋の東西を問わないきらびやかな部屋には伝統的な落ち着きが一切無いない。
やはりこの男は自分には理解出来ない、と思いながらも聞仲は噛み合わない会話を打ち切り、この部屋を出たいという衝動を堪えて話を続けた。

「最初江戸に来た時は何て野蛮な所だろうと思ったけれど君がいると思えば此処も住めば都、こうやって長崎や京の物を取り寄せれば中々悪くないよ、江戸も」
「貴様の事などどうでもいい」
「では何を聞きたいのだい?この茶について知りたいのかい?これは英吉利という国から手に入れたもので…」
「私はほうじ茶派だ。私が知りたいのは加茂屋の平助についてだ」
「おお、君はどうして血生臭い事が好きなのかね。辻斬りなどどうでも良いではないか」
「仕事だ。早く答えろ」
「わかったよ…」
公明は大袈裟に溜め息を付くと扇をぱたりと閉じた。腐っても元同業である。公明は聞仲の来訪の意を察して珍しく真剣な表情に戻った。

「加茂屋は先代の錦司の代から急に成長した廻船問屋で店自ら仕入れた京の櫛や紙などの小間物を主に持ってきている。錦司は先々代の元で番頭をしていて才を見込まれて一人娘のお梅の婿になったそうだ。
錦司は実家が小間物を扱っていて目利きが良かったから、彼が仕入れた品物は江戸で評判になってね。十年ほどで一気に加茂屋を大店にしてしまったよ。
そしてその錦司の番頭を務めていたのが平助。僕は彼に直接会ったわけではないがそれなりに店を仕切っていたらしい。但し、性格が良いという評判は聞いた事ない。むしろ金に五月蝿くて煙たがられていたらしい。錦司は商売には興味を持っていたが金には拘りが無い性格だから特に気にしていなかったらしいけどね。
だから平助が斬られたと聞いても僕はあまり驚かなかったな。半年前に錦司が死んで平助が店を仕切り始めてから恨みを持つ者もきっと増えていたに違いないからね」
「何故錦司は死んだのだ?流行り病にでも罹ったのか」
「…聞仲君、半年前は江戸にいなかっただろう?」
「ああ。なぜ分ったのだ」
「半年前に加茂屋錦司が大川(隅田川下流)で浮かび上がった時はこの辺りでは大騒ぎだったのだよ。江戸にいれば知らない訳が無い」
「何だと。殺されたのか?」
「それが溺死か他殺か良く分らなくてね。
どういう訳か岸に上げられた時には死後数日経っていて、遺体に切傷らしきものはあったけれど腐敗していてそれが死後に偶然川の中で出来たものなのか同心達は区別が付かなかったらしいよ」
「ふむ…」

目を伏せて考え込む聞仲。
長い睫毛が影を落とし白い聞仲の顔に彩りを添える。白金の髪が陽光を浴びて淡く輝き、その美しさに趙公明はうっとりと見入った。
しかしそんな無防備な美しさは趙公明を再び見る時には消え去った。また先程の厳しい表情に戻る。

「錦司が不可解な死に方をして、その後を継いだ平助がまだ斬られたのは単なる偶然とは考え難いな。しかし加茂屋は今どうしているのだ?」
「聞仲君、平助は加茂屋を継いでいないよ。実際は継いだも同然だが錦司の子供はまだ店を継げる年齢ではないから妻のお梅が店を継いでいる事になったんだ。だから看板はしっかり残っているし、錦司の代の部下がそれを支えているよ。ま、数年もすれば息子が元服するからどうにかなるだろうね」
「そうか」
聞仲は考えをまとめた。
加茂屋自体に恨みが有るのならば錦司や平助を殺したのだから息子やお梅も殺されるはずだ。しかし看板がしっかりと残っているとなると加茂屋の身内か、もしくは錦司や平助に恨み持つ者がこの事件に関わっていると考えた方が自然だ。

「錦司と息子、もしくはお梅との仲はどうだったのか?」
「息子はまだ手習いに通っている子供だから知らないがお梅とはどうかな。ようは主人と親の命で決められた結婚だし、お梅は昔から小町娘と評判で我が侭放題に育てられたから仕事一筋の錦司とはすれ違いも有ったらしい。錦司は芸者遊びもしていたらしいからね」
「芸者?深川か」
「深川以外の芸者など座敷に呼ぶ価値も無いよ」

どうやら趙公明の美識眼に辰巳芸者以外は適わなかった様である。
しかしそんな事はどうでも良い。聞仲が考えても加茂屋程の大店ならば遊女の吉原以外ならば深川に間違い無いのだろう。

「またしても深川か」

聞仲は独り言を呟く。

「調べる事が多くなるばかりだ…」
「ねえ聞仲君」
膝を進めて聞仲ににじり寄る公明。
「君の仕事に対する忠実ぶりも良いがたまには息抜きをするべきだよ」
「はぁ?」
呆れた顔をする聞仲を気にせず膝に置かれた白い手を公明は両手で握り締めた。
とっさに聞仲が払おうとするが思いがけず力強く公明の両手は払えない。聞仲の顔が引き攣った。気付けばくどすぎるほどゴージャスな顔が自分の目の前に迫っていた。

「今夜は僕と二人で懐かしい日々を語り合おうではないか。君の為なら山海の珍味と酒を用意してあげるから…」
「この…大馬鹿者がぁぁぁぁっ」
「ふぐっ」

聞仲の大声と同時に公明のうめき声が部屋に響いた。




番頭が背後に人の気配を感じて振り向くと聞仲が着物の乱れを直しながらやって来ていた。
「おや。もう帰るのかい?」
主人が接客好きである事を考えれば半刻ほどで部屋を出るとは随分と早い。
聞仲は不機嫌さを眉間の辺りに残していたが番頭を見るといつものそつの無い表情に戻った。

「ええ。申し訳ありませんが用事が有りますんで失礼させていただきます」
「そうかい。またうちの庭を宜しくな」
「はい」

聞仲は軽くお辞儀をして雪駄を履くと店を出る。しかし足を止めると振り向いた。

「番頭さん」
「はいよ」
「薬箱持って旦那さんの部屋に行ってください」

番頭がどういう意味かと問おうとしたが聞仲は出口をくぐって通りに消えてしまった。
首をかしげながらも奉公人に薬箱を持たせて趙公明の部屋に行くと、大破された障子の向うから見える庭の薔薇の中に主人がいた。
聞仲に湯飲みで頭をかち割られ、薔薇の中に投げ飛ばされた公明は額から血を流しながら薔薇を手に抱えていた。

「ははっ、恥かしがり屋の君にはちょっと積極的すぎたかな?しかし手に入れ難いほど欲しくなるねっ!はーはっはっ」


翌日、番頭と一緒に部屋に入った奉公人は何も言わずに田舎に帰った。



****



聞仲が佃島でその様な立ち回りをしている一方、飛虎は上野に来ていた。
不忍池の周りには沢山の店がやはり建ち並んでおり、その中の一件に入った。
「十三屋」は櫛等を取り扱う店である。くし、つまり四と九を足して十三なので店の名前が付いた。
商品がゆえ、当然店内に店員以外にいる人間は女性だけである。
飛虎は居心地の悪さを多少感じながらなるべく体を小さくして店の隅に座った。

お喋りで愛想の良さそうな店員を捕まえると飛虎はいつもの人懐こさでその娘と会話を始めた。
小枝(さえ)というこの娘はお由紀と仲良かったので飛虎はお由紀の事をさして苦労も無く知る事が出来た。

事件のことになると元気の良い江戸娘も悲しい表情をしながらお由紀のことを小枝は話した。
やはり飛虎の予想通り、お由紀の恋人は深川に住む年上の戯曲家であった。

小枝もまた恋人の名前を知らなかったが二人が日本橋辺りで歩いているのを見かけていた。予め聞仲から教えてもらった新見大蔵の姿を言ってみると彼女はその男に間違い無いと断言した。そして新見大蔵が斬られてから自分が殺されるまでの二日間、お由紀は店にも出ずに塞ぎ込んでいた。(因みに小枝はお由紀の恋人が新見だと知らないので辻斬りが恐ろしかったのだろうとしか思っていなかった。)
飛虎は更にお由紀について探ってみたが他に是といって事件と関わりの有りそうな事は聞けなかった。
やはりお由紀は新見が斬られたのに関連して斬られたのであろう。飛虎は確信した。
その後も辻斬りや他愛も無い世間話を続けていたが、店の主人の厳しい視線に気付いた小枝は我に返った。

「あら、いけない。こんな無駄話をしていて済みません。で、御侍さんはどんなのを御求めでございますか」

その時になって飛虎はやっと自分が櫛屋に来ていた事を思い出した。
慌てて態度を取り繕う。

「いや、そのよ…」
「隠さなくても結構で御座いますよ。ウチらは商売柄分りますって」
小枝は上目使いに飛虎を見る。瞳は嬉々としている。
「お客さんはどんなお方に送られるつもりでございます?姿形を申し上げて下されば私が選んで差し上げます」

飛虎の苦笑を小枝は勘違いしたのだ。
当時、男性が自分で使わない櫛屋に来る事は無い。男が櫛を買いに来るとは女性に櫛を送る事を意味する。そして「苦しくしんどい」の略と捉えられている「くし」を送るとは生涯を共に過ごそうと男性が女性に求める、つまり求婚する事である。
まさかお由紀のことを知りたかっただけに来たとは言えないので飛虎は一つ買う事にした。

「そうだな…。派手なのではなくて、上品なやつが良いな。一見地味だけれど、質の良いそんなやつを頼む」
「色は如何なさいましょう」
「目立つ色ではなくて落ち着いた色を…そうだ、椿の細工をしているものはねぇか?」
「それなら丁度良い物がございますよ」

と言って小枝が持ってきたのは臙脂(えんじ)色の櫛だった。
「京から取り寄せたもので、漆塗りに椿の螺鈿細工がしております。派手ではないけれど大名様の奥方でも欲しがるような逸品でございますよ」
「確かに一目で分る良い品だ。…よし気に入った、包んでくれ」

一目でその櫛を気に入った飛虎は気前良く金を払った。櫛に合わせて薄桃色の紙に櫛を包みながら小枝は微笑んだ。

「こんな上品な櫛が似合うのですからきっと美しい方なのでしょうね」
「お前さんの方がもっと綺麗だよ」
「まあ嬉しい。けど櫛を買うような男の方に言われても残念なだけ」
小枝は包み終えた櫛を渡す。

「はい。御幸せに」
「お前さんにもいい男が直ぐに見つかるよ」
「そう願っております」

飛虎は懐に櫛をしまうと店を出た。






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